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森の工房;シンプレクサスから

志田寿人(Shida HISATO)による工房日誌と未推敲メモ

ジュピター;巨大ガス惑星の大赤斑と生命の散逸構造

太陽の直径の11倍もある木星はその大きさもさることながら,
気体の下の陸地という僕等の惑星のイメージを完全に裏切る
点でも驚異の惑星である.
 ガス惑星である木星には大赤斑(GRS)と称される地球が2個分入って
しまうような巨大な模様があり,望遠鏡マニアの格好の観察
対象となっている.驚くべきことにこの模様は安定していて,
100年単位で基本形が維持されているという.
 木星の表面温度は摂氏ー140度で絶対0度から比べれば桁違いに
高い.これは太陽からの輻射熱エネルギーの予想値も上回る
値で内部からのエネルギー流出があることを示している.
エネルギー動態の散逸構造ときわめて安定した構造の存在,
これは複雑系の論客;スチュアート・カウフマンに生命体との
アナロジーを示唆させる一文を思いつかせた!
 
「自由生活を営む生物はすべて非平衡状態にある.実際,生物圏
それ自身も太陽の放射熱の流動によって駆動される非平衡状態
である.」スチュアート・カウフマン著,自己組織化と進化の
論理,1999,p.47,米沢富美子訳.

 カウフマンの理論はアナロジーの論法が飛躍に満ちていて
スリリングである.昨日思い立って彼のコミュニティを立ち上げて
しまった.未だ参加は僕一人,興味があるかたの参加を募集中!
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テーマ:星・宇宙 - ジャンル:学問・文化・芸術

喪の風景・infinite



5月の四川の大地震は10万に近い死者・行方不明者を飲み込んで
収束しましたが,その後も悲しみの連鎖は絶えることが有りません
でした.今年に始まることではなく,不条理な大量不在の強要という
のは自然災害だけでなく,殺人,戦争,政治的弾圧と人類の歴史
そのもののようで僕自身どのように対処していいのか今もって
よく分かりません.
 以下のエッセイのような短いコメントは直接それを考えて
浮かんだのではないのですが,数字で表せないものを自分の思い
も重ねてまとめてみました.タイトルがinfiniteという曲も
いつものso-netのブログにUPしましたので時間が空いたとき
聴いていただけたらと思います.

http://symplexus.blog.so-net.ne.jp/


喪の風景

あのひとは,あの子は帰らない.
私は何日も何夜も食事の準備をして待つ.
蝋燭を灯し,食器を洗い,そのひとの衣服を整えて.
私は耐える.不在の儀式は死を受け入れないことだから.
くりかえしくりかえし同じことをして・・・.
私は忠実になろうとしているのだ.
どこかえいってしまったあのひとのために.

ふと私は奇妙な居心地悪さを感じる.
いったいなぜ私はこんなところに留まっているのか.
私は会話をし,歩き,食事をし,あのひとを忘れようとしている.
私は不完全なのだ.半身をもがれて苦しみに耐えようとしている.
私はたまりかねて外出し,意味も無くさ迷う.

ひとびとはなぜ笑うことが出来るのだろう.
こんなにも苦しんでいる私が見えないのだろうか.
私は疲れてしゃがみこむ.大都会で,けわしい山道で,戦場で,
鬼火が青く燃えるそこかしこで.

ああ,私を待っていてくれるものは居ないのか.
夜ごと蝋燭の灯の下私を抱きしめてくれるものは.
私のひび割れた手足はぼろぼろで
地の底から野獣のようにうめき声を上げる.
髪の毛からは冥界の匂いが漂い
その時,私はあのひとの吐息を確かに感じた.
そうだ,私を助けてくれるのはあのひとしかいないのだ!

見上げると木立を風が吹き抜け
空を一片の白い雲が漂っていく.
あのひとは死んだのか!
私の前から永遠に消えたのか!
私はあのひとにさようならを言った.
また会う日まで待っててねと.

テーマ:雑記 - ジャンル:日記